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2016-10-21-Fri-00:15

【 小説の書き出し 】

 夜道を一人で歩いている時、ふと後ろを振り向くのが怖くなる瞬間がある。足音が聞こえるからとか、分かりやすい理由など無く。実際に振り向けば後ろには何もないのも分かっている。しかしどうも後ろを振り向くと何か嫌な事が起こりそうな気がしてしまい、体が硬直してしまうのだ。
 仕事帰り、見慣れた夜道、最終電車で帰ったので時間は確かに遅いのだけれど、私はまた意味もなく背後に恐怖を感じてしまう。一刻も早く自宅にたどり着き、手に持っている餃子とビールを安心して引っ掛けたい。
 この妙な癖のようなものは、私が小学生の頃から変わらず続いていた。子供が幽霊なんかを怖がるのは何となく分かるけれど、いい大人になって、まだそんな恐怖すら克服できていないのが恥ずかしい。どうやったら克服できるのかも分からないのだけれど。
 いっそ、一度振り向いてしまえば克服できるものなのだろうか。そういえば確か何かの本で読んだことがある。高所恐怖症のようなものを克服するために、あえて苦手な高所にたくさん通ったりする、みたいな治療法があるらしい。そもそも、夜道で背後が怖いといっても、感覚としては我慢できないほどでもないのだ。少し嫌な感じがすると言った程度。これはいっそ振り向いてしまって克服してしまっても良いのかもしれない。
 午前0時を回った住宅街、私の足音以外に聞こえる音は無い。思い立ったが吉日、今日やってみようか。
 変わらず歩みを進めている私の手に汗が滲んてくるのが分かる。情けない事だ。やっぱりどうも私は背後が怖いらしい。日中や周りに人が居る時はこんな事無いのにな。
 そうか。私にとって夜道の背後は、シュレディンガーの猫のようなものだ。一度も確認したことが無いから、怖いだけなのだ。
 意を決した。今日が私を変える日になる。私は歩みを止めた。
 ―体が、動かない。
 ため息が出た。意を決しても無理なのか。いや、決して無いのか。
 再び歩き始めた時だった。私のポケットから何かが落ちた。財布だ。
 再度立ち止まる。
 これは、もう振り向く他ないだろう。むしろ好機だ。財布をそのまま置いて帰るわけにも行くまい。
 理由さえあればそれは簡単に実行出来た。二十年間出来なかったことが、不思議なものだ。
 夜道の背後には何も無いはずだった。しかし、私が二十年の間夜道で振り返ることが出来なかったのにはどうも理由があったからのようだ。
 振り返るとそこに人が立っていた。


 ※構想も何も無い状態で小説の書き出しだけを書くという遊びをしてみる事にした。やってみればそれは結構面白かった。しばらく続けてみようかなと思います。

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